こんな人向け:
- 事業買収/売却を考えている
- 買収を行ったばかり
- 会社の業務でPMIを行う
- PMIに興味ある など
目次
はじめに
こんにちは、ヒデヨシです。
M&Aに興味のある方は聞いたことあるかと思いますが、PMI(Post Merger Integration)は、「買収後統合」という意味です。
コロナ禍による経済的なダメージや将来不安もあり、個人による中小企業・事業の買収や中小企業同士で収益の分散やアライアンスを強めていく観点からもこういった動きが今後より加速してくのではないでしょうか。
しかし、絶対に忘れてはいけないことは、
「買収」は目的ではなく、目的を達成するための手段である。
ということです。そして、これこそが最重要のテーマになります。
何を目的として買収を進めるのかによって、買収後にやるべきことも大きく変わってきます。
僕自身、会社員時代にとあるドイツ法人の買収プロジェクトに携わり、買収後は買収先の会社に1年間出向しPMIを行いました。
この記事では、そんな経験と中小企業を引き継いだオーナーさん方の実体験のヒヤリングを基に中小企業におけるPMIについてのポイントをいくつか書いていきたいと思います。
引き継ぎオーナーによる関与
まず、先述の通りですが目的を改めて確認しましょう。
今回の引継ぎがどのような目的かによって関与度が変わります。
企業同士であれば、大きく以下のようなPMIが存在します。
経営PMI | ・経営戦略 ・ガバナンス ・経営層選定 ・財務戦略 |
---|---|
業務PMI | サプライ/バリューチェーンマネジメント (売上増/コスト減のシナジー効果) |
意識PMI | ミッションビジョン理解 |
上記の通り、目的に合わせたトップ間での経営戦略の摺り合わせ等から始まり、各機能別の分科会にてシナジー案を出し実行に移して目的達成に向けてプロジェクト推進していくようなイメージになるかと思います。
一方、個人買収の場合、投資的な意味合いになるケースが多いかと思います。
その場合、もちろん最初は自ら汗をかいていく必要がありますが、オーナーのリソースをなるべくかけずに運営していく(もらう)ことが最終ゴールとなりますよね。
その為、目指すところはハンズオン支援は基本無し、月次の数値管理だけ行っていくというイメージになります。
ということは、これを行う為に一番のキーとなるのは「人」ですよね。
もっと言うと、自分がいなくても事業活動を任せることのできるキーマンとなる人が必要です。
その為、M&Aを進める際にはキーマンについて以下のようなことも確認をしておくべきです。
特に3つ目の報酬面での改訂が必要である場合、将来キャッシュフローに関わってくる=買収価額に影響が出るので、確認しておいて損はないかと思います。
確認ポイント:
- オーナーチェンジ後も残るか
- 何年くらい残りそうか
- 報酬や待遇など条件面での改善リクエストが出るか
関係構築のプロセス
企業同士の場合のPMIについては、これらに加えて「既存事業とのシナジー」を最大化させる為の分科会運営やガバナンス体制の構築を始め緻密に行っていくこともたくさんありますが、ここでは大まかに買収先との関係構築のプロセスについて記載したいと思います。
中小企業の引継ぎにおいては特に、業務が属人的になっているケースも多く、従業員のケアと業務フローの把握・整理がかなり重要になってきます。
これらを大きく4つに分けて順番に書きます。
(1)自己紹介
最初は基本的に「敵」であったり、「外の人」といった見られ方をどうしてもしてしまいます。あなたのことをよく知らないケースがほとんどなので当然ですよね。
なので、自分がどういう人で、何をやってきたか。今どういうことを考えて日々取り組んでいるかなど丁寧に自己紹介をすることが必要です。
また、あまり厳しい表情をいつもするのではなく話し易い雰囲気を作ることと、「昼休みは食堂で食べるので気軽に話しかけてください。」というように「いつ、話しかけてほしい。」というようなことを伝えておくと、従業員とのコミュニケーションがうまくいきやすいと思います。
(2)各社員との面談・業務確認
キーマンを含む各従業員との面談を通して、それぞれの考え方や特性を把握していきます。特に中小企業の場合、家族や生活に直結していることも多く親身になって聞いていくことは重要です。
各従業員との面談は、最低でも2-3ヶ月程度はかけて3-4回程きっちり行い、従業員との心合わせをしっかりやっていくことが重要です。
また、業務フローやKPIの整理を面談でのヒヤリングを通じてしっかり行っていく必要があります。
有事の際の復旧策というのもありますし、業績が芳しくない時なども何をどうすれば改善できるのかを細かく把握していく為です。
大企業ではしっかり整備されているところが多いかと思いますが、中小企業ではオーナー社長が感覚値としてもっていたり、従業員もきちんと把握していなかったりするケースもあるので、しっかりとヒヤリングを重ねて整理を進める必要があります。
(3)商流の確認
内部の整理がある程度できたタイミングで、取引先や外部の信頼獲得に動きます。
自己紹介やこれからの方向性についてお話していくのですが、ここで重要なのは、業務や経営がしっかりと理解できているかどうかが取引先からの信頼に影響する、ということです。
何もわかっていないオーナーになった途端に契約解除なんてこともなきにしもあらずです。(2)の面談を通して、しっかりと内部の整理を進めるとともに、業務・会社運営についての理解を深めてから外に出るのが良さそうです。
(4)会議体の確認・設定
会社の運営・成長において必要な会議体を設定していく必要があります。
設定していくのは、業務の確認で見えた重要な機能から取り掛かかるのがおすすめです。
一方、「必要な」と記載の通り闇雲に会議体の設定をしてしまうと無駄な会議と思われてしまう可能性もあるので、しっかりと最初は自分でファシリテートを行い、会議体の必要性の説明と生産性のある議論を行っていくことが重要です。
既存の会議体があれば、その延長線上という名目で設定するとやりやすいケースが多くあるかと思います。
よくある相談&留意点
ここからはオーナーチェンジに伴って発生する課題、解決に向けた留意点について書きます。
一番多いのが、オーナーチェンジに伴った給与や待遇面のリクエストかと思います。
「従業員の心を掴む為にも・・・」と思う心はあるかもしれませんが、ルービックキューブのように1つ動かすと「私の方が勤続年数が長いのに。」や「俺もあげてくれ。」というようにどんどんリクエストが上がってしまいます。
全員をハッピーにすることは難しいかもしれませんが、ここで大事なのは「なるべく全員が納得するロジックを作る」ということです。そして、従業員への説明はロジカルに、丁寧に行いましょう。
もう一つ注意しておきたいのが、基本給での支給は固定費となるため業績連動や賞与といった形の一時的な報酬(変動費)でなるべく対応するということです。
会社を買ったばかりで、これから利益を出しながら継続運営していけるかどうかも不透明な中、固定費をあげるということは極力避けた方が良いでしょう。
真摯に向き合っても従業員が辞めてしまうというケースもあります。しかしそこは「誰かがやってくれるはず。」と割り切って、そのほかの対応を進めていくことも必要になってくるかと思います。
さいごに
企業の売買はモノの売買ではないので、旧オーナーの思いや、生活をかけて働いている従業員さん達も含めて引き継いでいく必要があります。
事業を引き継いだ場合、独り新参者となるため、最初は中々理解を得られずに苦労することや、頭を悩ますこともたくさんあると思います。
コミュニケーションを地道に重ねることでキーマンを味方につけ、協力者を少しずつ増やしながら乗り越えていくということも重要かと思います。
または、第三者となる外部のアドバイザーをうまく活用し、コミュニケーションやプロジェクトを円滑に進めると言うのも一つの手かと思います。
弊社でも買収からPMIの支援を行っておりますので、ご興味ある方はお問い合わせいただければと思います。
読んでいただきありがとうございました。
それでは今日も、「やりたい、なりたい。」を実現していきましょう!